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"少女神"第9号

フランチェスカ・リア ブロック
理論社
¥ 1,680
(2000-02)

ポップで、キラキラしてて、ちょっとメランコリックで切ない、アメリカン少女小説。
たとえばポップカルチャーの羅列、家族や友情の問題、恋。キラキラしているけど憂鬱で、不健全かつ健全な青少年、ティーン向け小説はかくあるべき、かもしれない。

でもいちばん好きなのはディテールで、小説における固有名詞と食べ物描写好きにはぐっとくるのだ。たとえば、女の子が親友との「これからのこと」に思いを馳せる描写がこれ。

 
……ポニーは家具を全部薄い黄色と薄い緑とバラ色に塗り、花とフルーツの絵を描き、割れた磁器の破片でキッチンのタイルを張りかえる。ふたりして、ハリウッドの通りで日曜ごとに開かれる野菜や果物の市場に買い物にいき、ピカソが青の時代に描いたみたいな盲目のギター弾きがスペイン語で歌うのをきく。そのむせび泣くような声は、降りしきる雨か、燃えるバラの音のようだ。ふたりで日本のトマト、新鮮なバジルやディル、有機栽培の白桃や果肉の赤いオレンジやグリーンピースなんかを買う。いっしょに丘の人目につかないところにあるヒンドゥー教の僧院アーシュラマにいって、香を買う。夕食にあたしは、松の実、バラ水、乾燥したクランベリー、ショウガの入ったクスクスを作る。朝になったら、外にいってトロピカルなパン屋でグアヴァ入りのクリームチーズのペストリーとキャロットジュースをたのむ。夕暮れには丘を走る。……

徹底してるでしょ。ちなみにこの本、文字色がカラフル(読みやすさのために彩度の低い色だけど、ピンクとかグリーンとかパープルとか)だったりして、かわいい。


タルト・タタンの夢

とにかく出てくる料理がおいしそう。食べ物描写の多い小説大好き!
フレンチいいなあ、肩肘張らない感じのビストロで食べたい!という欲望が喚起されました、まんまと・・・。

お話自体は他愛のないものが多く、小さな下町のフレンチ・レストラン「ビストロ・パ・マル」を舞台に無口なシェフが些細な謎を解く、いわゆる「日常の謎」系統、日本版コージー・ミステリという感じ。頭からっぽにして読める。


ソフィー

 緊迫した監禁シーンの現在と、甘やかで輝かしい子供時代に見えながらどこか不穏な秘密をそこかしこに感じさせる子供時代の思い出。それらが交互に語られるので息つかず一気に読めた。

幸福な子供時代のノスタルジア、そして子供時代には終わりが来ること、大人にならない方法。

ソフィーはもちろんのこと家族揃ってある意味病的であり、何が起こったかを想像すると不幸の連鎖としか言いようがない。

カズオ・イシグロ「私を離さないで」とかシャーリィ・ジャクスン「ずっとお城で暮らしてる」が好きな人にお勧めかもしれない。


この闇と光

服部 まゆみ
角川書店
---
(1998-11)

闇と光についての、お話。

耽美でゴシック・ロマンな前半と思い切り陳腐な種明かしの落差が良い。
○○の話ではないか、ということとレイアは××ではないかということは前半を読んでいて気付いてしまったんだけど、それでもなお、後半の展開にはぐっと来た。
真実が判明してからの方が色々無理が生じている部分が却って気になってしまうのは確か。
でも子供の頃見える風景(レイアは盲目のため見えないんだけど)っていうのは得てしてああいうものだよなあ、と思ったり、夢みたいな日々ほど、いつだって、その実態はとんでもなく陳腐であるもので、と思ったり。

さらに作中作という飛び道具まで出して曖昧に濁したまま終わるラストも私は好きだな。


蛇・愛の陰画

 このなかでは「蠍たち」がいちばん好き。双子の姉弟が睦み合うように笑いあいながら行う殺人や近親相姦といった悪事を淡々と描くインモラル小説で、黒い……。こういう"恐るべき子供たち"的系譜の作品は世の中に他にも沢山あるけれど、内容に反してどこか少女小説っぽさを残した語り口といい、倉橋作品に繰り返し踏襲されるモチーフと関係性を凝縮したような物語といい、母親殺しによって完全に閉じるラストといい、印象的な短編なのです。

物凄くウェットになってしまいそうなお話を、硬質で美しい文章できっちり描いた「巨刹」も好きだな。

他には皮肉たっぷりでちょっとカフカ的な不条理コメディの「蛇」、あるコミューンでの出来事を少女からの書簡のかたちでサスペンスフルに描きつつSF的な展開に着陸する「輪廻」、淡々としたうつくしい文章で騙されそうになるけれど姉弟と両性具有の宇宙人で3Pしたのち宇宙人の"穴"から無限の空間へGO!する変態的な短編の「宇宙人」などなど、シニカルなSFものが目を引く感じ。


愛の生活・森のメリュジーヌ

金井美恵子の初期作品を集めた短編集。 

「兎」が特に好き。不思議の国のアリスのイントロダクションからしていかにもだけど、鮮やかなイメージと偽悪的に感じるほどキッチュな魅力に溢れていて良い。要するに少女の欲望が肥大化してグロテスクな悪夢になったようなお話なんだけど、なお幻想的なめまいの感覚を感じさせるところとか。

「愛の生活」みたいな軽薄さと不安が同居した現代小説も60年代に書かれたものだと思うとちょっとぐっと来るところはあって悪くないけれど、どちらかというともっと幻想的な作品たちのほうが私は好みかな。たとえば「黄金の街」のどこにでもありそうな汚く野蛮で猥雑な街が、まるで極彩色の夢の中みたいな、幻想的で鮮やかな子供の王国としてうつくしい文章で描かれているところが好き。

ある種の現代文学の文法と、時折見える幻想文学めいた表現と、森やアリスのイメージに召喚されるようなどこか仄暗い童話めいた雰囲気が混合しているところに魅力を感じます。その意味で「アカシア騎士団」もとても良い。


迷路のなかで

 おそろしい。面白いかどうかと訊かれたら返答に困るが、読んでいてこれだけ不安な心持ちになる小説はなかなかない。この小説のなかには登場人物の感情表現らしきものはほとんど無く、ほとんど執拗と言ってもいいように描写、つまり外面的かつ客観的な描写表現ばかりが続いているのに、それに反して描写の羅列から受ける印象は、ひどく内面的だ。タイトルが「迷路のなかで」というのはできすぎている。無機質な迷路をあてもなく延々と歩き、ふと気が付くとどこか見覚えのある風景をまた歩いている、ああまたか、結局どこへも行けないのだ、どこへ向かえばいいのか、そしてここがどこかも解らないのだ、というような徒労感と心許なさと虚無感の伴う読書。読者は主人公と立場が重なりつつも、主人公のみと一致しているというよりはむしろあちこち曖昧に侵食した、奇妙にずれながら反復する小説世界と自身が重なっている、その感覚がこわい。
余談だけれども、この小説のなかで使われている数々のギミックは、偶然なのか蓋然なのか、怪談で使われるそれと似ている。つまり、およそ人を不安にさせるような表現と技巧の集積、に見える私には。


乙女の密告

赤染 晶子
新潮社
¥ 1,260
(2010-07)

 短い文を重ねていく簡潔な文体、芝居がかった世界観、関西弁の科白、どこか上滑りしていくような「乙女」という言葉が、アンネの日記とアイデンティティの問題を扱った重い題材とは裏腹に奇妙にユーモラス。デフォルメされたようにキャラの立っているバッハマン教授や麗子様や貴代といった周りの人物と、いかにも影の薄い主人公。すこし毛色の変わった少女小説としてもたのしく読めます。

 ラスト、アンネを密告したのは誰(だと主人公は言いたいの)か、という一番重要なところが解り難くて、選評を見ても審査員の間でも解釈が割れてますね。ちなみに私はどっちとも少し違うと思ったのだけど。


量子回廊 (年刊日本SF傑作選)

 最果タヒさんの「スパークした」が載っていた群像がどこかに行ってしまって悲しかったので、改めてこちらを購入。もっと小説も読みたいな。

正統派のSFから、幻想文学めいたもの、奇想文学っぽいもの、ナンセンスものなどバリエーション豊かでたのしく読みました。でも年刊日本SF傑作選というわりには「SFと呼べないこともない」、くらいのものが多い印象かなぁ。選者の趣味なのか、最近のSFのトレンドが純文学や一般小説寄りになっているのかは私はSFの良い読者ではないのでよくわからないし、実際そういう小説の方が私には読みやすいんだけども、折角だから最近のガチで凄いガチSFな短編も読んでみたかったのに!

市川春子「日下兄弟」、八木ナガハル「無限登山」の漫画短編2篇がこの中では最も面白かった。(市川春子さん単行本買いました。八木さんのは出てないのかな?)
小説では皆川博子「夕陽が沈む」が好き。


少女外道

皆川 博子
文藝春秋
¥ 1,950
(2010-05)

 なんと言ってもタイトルがよい。少女外道。少女外道。

表題作は血と傷にフェティッシュを持つ女の子の話だけれど、「外道」っていう言葉が一見似合わないくらい抑えた、だけど一生背負わなきゃいけない仄暗い背徳の描写、ある時代の日本の家庭の空気、じりじりと焼け付くような日差しにじっとりと汗ばむような夏の空気感、…が美文で綴られるという、好きな人には堪らない感じの。海のシーンで吉行淳之介「夏の休暇」のラストが過った。

あとは「巻鶴トサカの一週間」のラストが格好良すぎて好き。

皆川博子はもう80歳でこういうのを書いているのは凄いというか格好良いなあと思う。



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