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わたくし率イン歯ー、または世界

 先週「パンドラの匣」を見てきまして、未映子さんの竹さんが意外としっくりきていてうっかりファンになりそうになり、家に積んだままの本をちゃんと読むことに。買ったまま積んでる状態の本と読みさしの本が多すぎてもうそろそろわけがわからない今日この頃。

それはそうとこないだヴィレバンに寄ったら、「乳と卵」に「芥川賞とって主演女優まで…未映子さんのハイヒール折れろ!」という衝撃のPOPがついていておもしろかったです。きょうびそんな台詞、女子トイレでも聞かれません。

それでこの本なんだけども、短編と中編の間くらいの長さのが1篇と短編が1篇で、それを児童書なみに大きな文字で印刷してどうにか薄めのハードカバーに仕立てた感じ。なんだけど、独特の語りの口調に児童書みたいな大きな文字が意外と似合ってるのね。なんかかわいくって。
声に出して読みたい日本語。文章の独特のリズム感がおもしろくて、ああこれ音読したら気持ちいいだろうなあ、って読んでいて思います。
最新作の「ヘヴン」は、ぱらっと見た感じ文体も普通になっちゃった模様。

表題作の「わたくし率イン歯ー、または世界」。
題名は意味がわからない、と思うかもしれないけども、文中で「歯」について、「わたし」と「私」について、それから「わたくし率」についてもきっちり説明してくれている。

一人称小説で、最初からずっとわたしわたしわたしわたし、っていうやわらかな自己主張が続いていって、その思考内容はときに支離滅裂であって(バロウズを読んだ直後なんでまあ言ってる内容が理解できるぶん全然普通に見えるけど)それでも読者はその「わたし」の語りを経由して物語を知ることしかできないから、大阪弁の現代詩にも似た語りに侵食されていくような形で「わたし」の脳内に入り込んでしまう。それが後半のある事件を境に、一気にわたしわたしわたし、だった世界に穴が開いてしまうのね。それは主人公にとっても必死で構築していた「わたし」の世界に急に穴を開けられる痛切な衝撃だし、読者にとっては初めて「わたし」の外の世界が、つまり「わたし」が立っていた場所が見えるようになる瞬間。だけど現実逃避でもパラノイアでも何でもない、ただ自己の存在に対する不安を「わたしは歯って決めたんや」と決めつけて、歯でも何でもいい、仮託してしまえたら、という気持ちが自分にも無いとも思わないし、青木が「わたし」に教えてくれた<純粋経験>---私もわたしも何の主語もない場所、それがそれじたいであるだけでいい世界、それじたいでしかない世界---と似た経験に心当たりが無くもないし、なんだかちょっと切なくなった。痛々しい小説だなぁ。その物語の核の発端であるところの青木との会話が、川端康成の「雪国」の書き出しの主語は何か、っていう話で、このエピソードはすごく好きだな。そういうどうでもいいところに、純粋経験は見出されるものなのだ。


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わたくし率イン歯ー、または世界 川上未映子

芥川賞候補作の超新人のデヴュー作!この世界の人たちが、自分たち何者であるかを考え続けているうちに、私は、奥歯のことばかり考えている...

  • 粋な提案
  • 2010/09/17 1:57 PM

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